志摩便りー7−
(4/12/05)

秋の彼岸から春の彼岸まで

肩から腕の痛み

重いものは下げられるが、棚のものをとるのが痛い
髪を梳きにくい

コンビニに入ると、冷えて痛い

眠れない、夜中に目が覚める

肩関節周囲炎


 今回は題名からして、またキーワード(見出し)にしましても、クイズみたいになってしまいました。これは「五十肩」にかかった患者さんの訴えを列記したものです。最後、一番下の肩関節周囲炎は「五十肩」の正式な医学病名です。
 このような不自由を患者さんから聞きますと、整形外科医は五十肩だと考えます。50歳前後に多いとはいえ、80歳以上の人もいます。五十肩になる原因ははっきりとわかっていません。しかし、肩関節を包んでいる袋や筋が悪くなっているのは確かですから、肩関節周囲炎という病名がついています。関節の骨や軟骨は悪くなっていないので、普通のレントゲン撮影では異常が見つかることは少ないです。
 痛い場所は肩が中心ですが、時には腕(うわうで上腕)の外側だけ痛いこともあります。しかし、肘から下までや病めることはありません。手を下げての仕事、例えば、米俵なら一袋も下げられますが、髪を梳いたり、布団を押入れに入れたり、洗濯物を干したりするのが辛いといいます。つまり、腕を直角くらいに挙げる動作で痛みがでます。
 冷えると痛いのが特徴で、夏でもコンビニの冷房で痛くなります。夜中に痛くて眠れないという人はかなり病状が進んだ人ですが、結構多いです。夜は冷えますから、そのためもあると思いますが、夏でも痛い人もいますから、夜間痛は独立した症状でしょう。
 先日、68歳で、今は子守が仕事という女の人が受診されました。紹介状を持ってきて腰が悪いので、腰の牽引をして欲しいということでした。半月位して、肩の痛みについての相談をうけました。典型的な五十肩でした。幸い早くなおりました。その時、患者さんが言った言葉が、「この十年、秋の彼岸から春の彼岸まで肩が痛んでいた」です。肌寒くなる秋の彼岸から、冬を越して暖かくなりはじめる春の彼岸まで辛かったのでしょう。この言葉は、たしかに五十肩の特徴をよくあらわしています。この表現力には感心しました。
 勤務していたころ、医学生や若い医師に患者さんの訴えはしっかりと聞くように話していました。私も先輩からそのように指導されたからです。患者さんの話を詳しく聞いていると、自分の勉強にもなります。つまり、患者さんが医者の技量をあげてくれます。
 最後に。尊敬しているO大学の教授が退官されるときの,門下生へのお話しの一節です。『知識?一体、なにをどこまで君がわきまえているといるというのでしょうか。君が謙虚に耳をかたむけるものがあったら、患者さんの訴え以外に、何がありますか?』心に沁みるお言葉でした。